更新日:2018年11月30日

韋駄天(いだてん)の勇松(いさみまつ)

小松の昔話「韋駄天の勇松」の一コマのイラスト

勇松(いさみまつ)(本名(ほんみょう):北出亀松(きたでかめまつ))は、安政(あんせい)3年(ねん)(1856年(ねん))大領村(だいりょうむら)の農家(のうか)の次男(じなん)として生(う)まれました。家(いえ)が貧(まず)しかったので15歳(さい)のとき名古屋相撲(なごやすもう)に入門(にゅうもん)。しこ名(な)を勇松(いさみまつ)といいましたが、32歳(さい)で相撲(すもう)をやめ、故郷(こきょう)に帰(かえ)って来(き)ました。
体力(たいりょく)には自信(じしん)があり、天秤棒(てんびんぼう)1本(ぽん)とざる2つでできる魚(さかな)の行商(ぎょうしょう)を始(はじ)めました。遠(とお)い山(やま)の中(なか)まで足(あし)をのばして毎日行商(まいにちぎょうしょう)を続(つづ)け、彼(かれ)の足(あし)はさらに鍛(きた)えられました。
ある朝(あさ)、魚(さかな)を担(かつ)いで郷谷川中流(ごうだにがわちゅうりゅう)の沢村(さわむら)に来(き)たとき、子供(こども)たちのおもちゃにされていた1匹(ぴき)の白(しろ)い小蛇(こへび)を助(たす)けてやりました。
1日(にち)の行商(ぎょうしょう)を終(お)えて、郷谷川(ごうだにがわ)の土橋(どばし)のところまでくると、年(とし)ごろの美(うつく)しい娘(むすめ)に出会(であ)いました。「私(わたし)は、今朝助(けさたす)けていただいた白(しろ)へびでございます」といって、お礼(れい)に足(あし)の速(はや)くなる薬(くすり)をくれました。勇松(いさみまつ)の足(あし)はこの日(ひ)から特(とく)に早(はや)くなり、また、どれだけ走()はしっても疲(つか)れなくなりました。
ある日(ひ)、仕事(しごと)のために金沢(かなざわ)と寺井(てらい)の間(あいだ)6里(り)(24キロメートル)の道(みち)のりを、7時間(じかん)に3度(ど)も往復(おうふく)したことがあったり、ときには1時間(じかん)に10里(り)(40キロメートル)を走(はし)ったりしたそうです。
38歳(さい)のとき、小松宮殿下(こまつのみやでんか)の使(つか)いとして、奥州二本松(おうしゅうにほんまつ)(福島県(ふくしまけん))から広島(ひろしま)の大本営(だいほんえい)まで(1,300キロメートル)を36時間(じかん)で駆(か)け抜(ぬ)けて世間(せけん)をあっと言(い)わせました。
また、明治(めいじ)35年(ねん)には、東京上野(とうきょううえの)の忍(しの)ばずの池(いけ)のほとりで、12時間(じかん)休(やす)まずに走(はし)る競走(きょうそう)に出(で)て、午前(ごぜん)4時(じ)から午後(ごご)4時(じ)まで、池(いけ)のまわり(約(やく)3キロメートル)を120回(かい)も回(まわ)り、一等賞(いっとうしょう)を受(う)けました。46歳(さい)のときでした。
仏教(ぶっきょう)を深(ふか)く信(しん)じていた勇松(いさみまつ)は、時々(ときどき)京都(きょうと)の本願寺(ほんがんじ)へお参(まい)りに出掛(でか)けましたが、いつも汽車(きしゃ)には乗(の)らず走(はし)っていきました。あるとき京都(きょうと)の駅前(えきまえ)で、知(し)り合(あ)いの小松(こまつ)の金持(かねも)ちのおやじさんに出会(であ)いました。「おお勇松(いさみまつ)、本願寺参(ほんがんじまい)りに来(き)たのか。わしは次(つぎ)の汽車(きしゃ)で帰(かえ)るところじゃ」。「そうですか、ではお先(さき)に」と言(い)って、勇松(いさみまつ)は走(はし)り出(だ)しました。このころの汽車(きしゃ)は、京都(きょうと)から小松(こまつ)まで7時間(じかん)もかかりました。おやじさんが小松駅(こまつえき)について、駅前(えきまえ)へ出(で)てくるとこれはびっくり。いま風呂(ふろ)から上(あ)がったばかりの勇松(いさみまつ)が家(いえ)の方(ほう)へ歩(ある)いて行(い)くのが見(み)えます。ひと風呂(ふろあ)びるのに三十分(さんじゅっぷん)として、勇松(いさみまつ)は、小松(こまつ)から京都(きょうと)までの道(みち)のり240キロメートルを、汽車(きしゃ)より早(はや)く、なんと時速(じそく)40キロメートルで6時間半駆(じかんはんか)け通(とお)したことになります。
北陸街道(ほくりくかいどう)を京都(きょうと)へ走(はし)っていく勇松(いさみまつ)を見(み)た人(ひと)が、空(そら)を飛(と)ぶようにしていく足(あし)あとを測(はか)ってみると、わらじ跡(あと)の間隔(かんかく)がなんと3メートルもあり、みんなたまげてしまいました。

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